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相続手続を円滑に進めるために ~遺言執行者のすすめ~

平成25年3月7日
弁護士 秋重 実

 
 今回は,相続手続を円滑に進めるための一つの方法として,「遺言執行者」について解説したいと思います。
 
1 遺言の執行とは?
 遺言書に書かれた内容は,誰かがそれを行動に移すことにより,初めて実現されます。そして,遺言書の内容を実現することを,「遺言の執行」といいます。
 たとえば,不動産を相続させる場合であれば,所有権移転登記手続を経て,その相続人に名義変更しなければなりませんし,その不動産に相続人以外の人が住んでいる場合には,その人に出て行ってもらわなければなりません。
 
2 遺言執行者とは?
 遺言の執行は,相続人自身で行うこともできます。
しかし,相続人がたくさんいて,相続財産もたくさんあるような場合に,それぞれの財産の処分ごとに相続人全員が関与することは非常に面倒です。
預金の解約といった手続ひとつをとっても,相続人全員で共同して行うことは容易ではありません。
 また,行方不明の相続人がいる場合には,その人のために財産管理人を家庭裁判所で選任してもらわなければ手続を進めることができません。
 そこで民法は,遺言書の内容をよりスムーズに実現できるように,「遺言執行者」という制度を設けているのです。
 遺言執行者は,相続人全員の代理人とみなされ,遺言の執行に必要な一切の行為をする権利・義務を有しています。
 遺言執行者がいれば,相続人全員で遺言執行のための手続を行う必要はありません。
 
3 遺言執行者には誰がなるのか?
 遺言執行者は,未成年者及び破産者を除き,誰でもなることができます。
しかし,財産調査等の手続が負担となる場合や,相続人間で争いがあるときには他の相続人から解任請求がなされることもありますので,弁護士等,利害関係のない第三者に依頼した方が良いでしょう。
 
4 遺言執行者の指定・選任
 遺言者は,遺言の中で遺言執行者を指定することができ,その指定を第三者に委託することもできます。
また,遺言執行者がいないときや死亡したときは,相続人等の利害関係人の請求によって,家庭裁判所がこれを選任します。
 そのため,遺言の中で子を認知する旨を記載した場合など,法律上遺言執行者が必要であるにもかかわらず,遺言者がその指定をしていなかった場合,相続人等が家庭裁判所に遺言執行者の選任を請求することになります。
 また,遺言執行者を指定していたにもかかわらず,その人が死亡してしまった場合には,やはり家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらう必要があります。
 
5 遺言執行者の報酬
 遺言執行者の報酬は,遺言で定めることができます。
 遺言に定めがない場合には,遺言執行者と相続人との話合いにより決定されますが,話がまとまらない場合には,家庭裁判所に報酬額を定めてもらうための審判を申し立てることになります。
 したがって,後に相続人と遺言執行者との間で報酬についてもめることがないよう,相続財産の価格や執行のための業務内容などを考慮して,遺言で定めておく方が良いでしょう。
なお,当事務所では,遺言執行者をご依頼頂いた場合の報酬基準を設けております。
 
 遺言,相続に関するトラブルでお困りのことがあれば,当事務所までお気軽にご相談下さい。