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下請法と金型の無償保管について

令和7年2月18日
弁護士 秋 重  実

1. 下請法違反による勧告

 下請取引の公正化と下請事業者の利益保護を図るため、下請法(下請代金支払遅延等防止法)という法律が制定され、親事業者の義務や禁止行為が定められています。また、下請法に違反すると、公正取引委員会から指導を受けたり、勧告を受けることがあります。
〇ポイント解説下請法(親事業者向け)
 下請法の関係では、近時、特に元請事業者が下請事業者に対し、無償で金型等を保管させたことについて、公正取引委員会が勧告を出すケースが増えています。令和6年度は今のところ12件の勧告が出ていますが、そのうち5件において、無償で金型等を保管させたことに対して勧告が出されています。直近では、今年123日に勧告が出ています。

「日産子会社が下請法違反、金型を無償で保管させる 公取委が勧告へ」(1月23日朝日新聞)
下請法勧告一覧
 

2. 不当な経済上の利益の提供要請の禁止と金型保管

 下請事業者に金型を無償で保管させることは、下請法のどの規制に抵触するのでしょうか。下請法では、親事業者に対し、禁止行為(してはいけない行為)として11の行為類型を定めています。そのひとつとして、親事業者は、下請事業者に対し、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることによって、下請事業者の利益を不当に害してはならないとされています(不当な経済上の利益の提供要請の禁止・下請法第4条第2項第3号)。
 下請事業者に金型を無償で保管させる行為は、この不当な経済上の利益の提供要請の禁止に違反するものとして、勧告が出されています。勧告の内容をみると、金型を無償保管させたからといって直ちに下請法違反とされるわけではなく、「当該金型を用いて製造する製品及びその部品の発注を長期間行わない」、「次回以降の発注の有無又は次回以降の具体的な発注時期の見通しを示すことができない」にもかかわらず無償で保管をさせ、また当該金型の現状確認等の棚卸し作業させていたケースに勧告が出されています。
 

3. 勧告の内容および公表

 どのような勧告がなされるのか、勧告の内容は事案によってさまざまですが、おおむね以下の内容の勧告がなされます。
① 違反行為の取りやめ及び原状回復措置
② 取締役会等での決議
③ 社内体制の整備
④ 役員及び従業員への周知徹底
⑤ 下請事業者への通知
 また、勧告をした場合、原則として事業者名、違反事実の概要、勧告の概要等が公表されます。平成15年改正前は、勧告に従った場合は公表されないという規定がありましたが、改正により削除され、現在は従ったとしても公表される扱いになっています。
 したがって、勧告を受けるとレピュテーションリスクが高まるおそれもあります。
 

4. 金型保管についてとるべき対策

 本年123日に行われた公正取引委員会の記者会見では、官房審議官が金型の無償保管について「底が見えない」と述べ、発覚していないケースが数多くあるとの認識を示し、監視をさらに強化する方針であるとのことです。
「あしき商慣習一掃を 公取委「自主申告」呼び掛け―下請法違反で発注元に」(1月30日時事通信社)
 このように、下請事業者に長期間にわたり金型を無償で保管させることは、今後も公正取引委員会の勧告や指導を受けるリスクがあります。そこで、親事業者としては、製品や部品の発注を長期間行わない場合には、金型を引き取る、下請事業者に費用を支払って保管してもらう、廃棄するといった対応が考えられます。
 

5. 最後に

 下請法による規制は他にも多岐に渡り、また毎年大規模な定期調査が行われています。親事業者としては、下請法を十分に理解し対策を取っておくことが重要です。下請法の内容については、下記資料に詳細な解説が掲載されています。
〇下請取引適正化推進講習会テキスト(令和6年11月)
 また当事務所では、下請法についてのご相談や、従業員向け研修など随時承っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。