「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」と倫理審査委員会について
1 「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」とは
「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」とは,人を対象とする医学系研究に携わるすべての関係者が遵守すべき事項を定め,それにより人間の尊厳及び人権が守られ,研究の適正な推進が図られることを目的とするものです。
研究者等の責務,研究計画,倫理審査委員会,インフォームド・コンセント等,個人情報,重篤な有害事象への対応,利益相反に対する対応や情報等の保管のための規定の整備,モニタリングなどの研究の信頼性確保その他により構成されています。その具体的な内容についてはネット上で見ることができます(http://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/n1443_01.pdf)。
人を対象とする医学系研究に関しては,従前,「疫学研究に関する倫理指針」(平成19年文部科学省・厚生労働省告示第1号)及び「臨床研究に関する倫理指針」(平成20年厚生労働省告示第415号)により,その適正な実施が図られてきました。
しかしながら,近年の研究の多様化に伴い,両指針の適用関係が不明確になってきたことや,ノバルティス社のディオバン事件といった,研究をめぐる不正事案が発生したこと等を踏まえて見直しが行われ,「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(平成26年文部科学省・厚生労働省告示第3号)として統合され,平成27年4月1日より施行されました。
2 倫理審査委員会とは
倫理審査委員会とは,研究の実施又は継続の適否その他研究に関し必要な事項について,倫理的及科学的な観点から調査審議するために設置された合議制の機関です。
この新しい指針において,倫理審査委員会についてはその機能強化と審査の透明性確保に関する規定が設けられ,委員構成,成立要件,教育・研修の規定,倫理審査委員会の情報公開に関する規定の充実化が図られています。
倫理審査委員会の委員構成については,具体的には,
① |
医学・医療の専門家等,自然科学の有識者 |
② |
倫理学・法律学の専門家等,人文・社会科学の有識者 |
③ |
研究対象者の観点も含めて一般の立場から意見を述べることのできる者 |
④ |
倫理審査委員会の設置者の所属機関に所属しない者(外部委員) |
⑤ |
男女両性 |
⑥ |
5名以上 |
という要件が課されています。特に,②④の要件を満たすものとしては,外部の弁護士が最適であり,委員に外部の弁護士を入れることによって,当該研究の公正性,信頼性が高まるものと言えます。
当事務所では,ICRwebの倫理審査委員会コースの研修を受講し,また,実際に倫理審査委員の経験もありますので,倫理審査に関するご相談に対応することが可能です。